製作協力:鍋屋バイテック会社様(以下、NBK様) NBK(鍋屋バイテック会社)
1400℃の鉄でネコロゴオブジェを作る
― 鋳造ロゴプロジェクト記録 ― Casting the Nekodamari Logo at 1400°C
今回の鋳造ロゴプロジェクトは、SNSのある投稿を見たところから始まりました。
X(旧:Twitter)でのNBK様の投稿
今回の鋳造ロゴプロジェクトは、
SNSで偶然目にした鍋屋バイテック会社様(NBK様)の投稿がきっかけでした。
溶けた鉄が流れ、ロゴが光る映像。
その瞬間、ふと浮かんだのです。
「炎上」を、物理的に燃やしてしまうのはどうだろうか。
今年の出来事を経て、ネガティブな言葉として使われてしまった“炎上”。
それを、1400℃の鉄で光らせる。
ユーモアと覚悟を込めた挑戦でした。
(↑ネコロゴに溶けた鉄を注いでいるシーン)
前例のない鋳造プロジェクト
X(旧:Twitter)でのNBK様の投稿
鋳造とは、溶けた鉄を型に流し込んで成形する製造方法。
通常は機械部品など、強度を求められる工業製品が中心です。
しかし今回は、ネコロゴを、順番に光らせる。
しかも最終的には、オブジェとして自立させる。
NBK様にとっても前例のない試みとなりました。
(↑砂型になったネコロゴ)
まず、溶かした鉄の流れを専門のソフトウェアでシミュレーションを行いながら、型の設計を行い、次に工作機械を使って素材を削り出して実際の型を製作していきます。
NBK様との初回会議の際に、WEB会議で実際の図面データを拝見しながら作り方や仕様についての解説をいただいていました。
ネコロゴの仕様上、文字は難しいという点に加えて、格子の線が細くデザインの為、いくつか太くなってしまうという注意点を説明されていました。
この時点で、専門職である設計士の3DCADが必要になり、削り出しに使う作業機械も、数千万円の設備となるので、型を作る必要がある時点でかなり大きな準備が必要となっている。
先ほどの様に、『今回の主目的は鋳造の様子でロゴアニメーションの動画を撮影すること』です。 ただ、折角鋳造をするなら「記念品にオブジェにしたい」と当工房がリクエストしたことから先に進んでいきます。
溶けた鉄(湯と言います)が流れる道(湯道)がフレームの様に見えた事から、角なら左右対称にしたいと希望したところ、ネコミミに見える仕様にしていただきました!
また、オブジェとなった際に自立する様に土台や台座にも工夫を行ってリクエストして、後は準備が整ったら「さぁ、いざ鋳造!」という場面です。
NBK様のご好意で実際の鋳造現場を見学させていただけることになり、現物の砂型を拝見すると…。
(↑裏面の砂型と、遊び心でつけられたネコちゃん)
まさかのまた遊びになる心が震えた型が出来上がってました!
そして、少し前に(※1)と書きましたが、実際の砂型を見てみると…。
(もしかして、ネコロゴの枠線が聞いてたより細くなってる…!?)
実際のロゴデザインに決する為に、限界まで攻めた設計していただいた様です。ネコは、線が細いので印刷や装飾でも難しいと言われているシーンが多いです。
鋳造ともなると、デザインを優先しないのであれば倍以上の太さになっても仕方ないと思っていたところに、職人のこだわりを感じられる型を拝見するところから始まりました。
(↑鋳造の準備をしていただいている様子)
ネコロゴならではの課題が…
現場での準備が整い、鋳造チャレンジが始まりましたが、まさかのネコロゴならではの課題で高難度になってしまいました。
同時手注湯が必要になる問題
NBK様では、機械を使って自動で鋳造を決定する製造ラインを構築されています。 実際の製品製造では、巨大な溶鉱炉から必要な溶けた鉄を移して大型の機械が自動で角度やスピードを調整しながら注いでいきます。
(↑溶鉱炉の蓋が開いた瞬間)
今回のネコロゴオブジェは、単発製作なので、手作業で溶けた鉄を掬い注ぐ「手注湯」という製造方法になりました。
NBK様では、技能承継の為に、手注湯の機会を度々設けられそうなのですが、今回、綺麗に光る為にはスピードの職人技で一定の速度で注がなければいけない事から、鋳造部門のトップとナンバー2のお二人の方にご協力いただける事に!
(↑溶鉱炉から溶けた鉄を取り出すシーン)
「また手注湯をする機会が来るとは思えなかった」と話されていた姿がまるで、ヒーローの登場シーンのようでした。
(↑溶けた鉄を運んでいるシーン)
ただでさえ職人の技が必要になる製法なのですが、ねこだまり工房が完成した鋳造品をオブジェとして置きたいと希望したことでさらに高難度となってしまいました。
2つの注ぎ口から、息を合わせて同時に注ぐ必要のある高度な挑戦です。
(↑悔しくてこぼれたシーン)
溶けている鉄ゆえ、1,400℃の危険なものです。安全の為にも長い柄杓(ひしゃく)のようなもので注目しましたが、長さがある分コントロールは難しいのに対し、注ぎ口は慎重で、的を外してしまったら型の外にこぼれてしまうし、いつの間にか入れていたら終わりで困り果てます。
慎重に、かつ溶けた鉄が冷えない様に早く、正確に、息を合わせて同時に注目しながらという高難度の挑戦となっていました。
ネコロゴの線が細い問題
そして、や技術困難以外の課題も…。
ネコロゴは、細い線に囲まれています。 通常の鋳造では、構造物や大きな部品を作る事が多い為、一見細い線などのデザインのあるものを作る事の方がなくなってしまいます。
また順番に光らせる為には、一定の溝で溶けた鉄を留まらせる必要があるために、線が細い場合には圧力が足らず横から溢れてしまう課題が発生しました。
(↑悔しくも型から過ぎたシーン)
この問題を解決するために、手作業で砂型に修正・調整を加え、さらにバーナーで余熱してからなど微調整を繰り返しながら何度も挑戦してくださいました。
砂型の調整が必要になると一瞬に、鋳造部門出身で現在は営業部門に所属されているより、装備を整えて応援にいらっしゃいました。
ヒーロー登場のBGMが聞こえてきそうなシーンです。
(↑砂型に手作業で修正を行っているシーン)
予定では『この視察を経て完了!必要な処理を終えてオブジェを受け取り、プロジェクト完了!』という予定でした。
しかし、完璧な対応策が実現しない為、予備を含めて5つほど用意していた砂型を使い切ってしまったため、後日再挑戦できる事になりました。
残念!どこまでは届いていたのですが、鉄がきれず、一度砂型を覗いてみると…
「ネコちゃんおらん!」と、皆様ネコちゃんを大変可愛がっていただいて和気あいあいとした和やかな園※見学させていただきました。
※NBK様では、工場ではなく工場と呼びかけ環境整備されています。
(↑ネコちゃんのいない鋳造品)
工場見学の終了と、リベンジへ
どうしてもどうしようもない要素が「オブジェにしたい」と無茶したぶりことと、「ネコである」事の2つじゃないかと思っていたのでロゴ、完了せず・プロジェクト断念でも覚悟かと思っていました。
工場見学を考える際に、念のために「もしできなかった場合は…」と打ち合わせをしようと思ったら、「できます。大丈夫です。」と力強く言い切られました。
実際の現場の様子を見ていたので、この人達なら、意地でも実現させながらなんとか強く感じました。
難しい場面になって、顔をしかめたり悲惨になったり様子もなく、「だったら…」「こうしてみたら…」と成り立っている姿は、観客として非常にカッコいい姿を見る事ができたと感じています。
(↑工場園見学の際の工場長とねこママ)
熱い復讐と職人の勇気
しばらくして、リベンジ動画が送られてきました。
ファイルを開いてみると、黄色に炎上するネコロゴが!
「あれ…?見学させてもらった時と、砂型の形が違う様な…?」 メールには何も書かれていないので、当工房の憶測なのですが、「もしかして砂型の基になる型の削り出しからやり直している…?」
動画を拝見すると、最小砂型にシーリング(遮光加工)を加えて側面から無駄にしないように更なる追加加工が行われていました。
(↑砂型にシーリング加工?)
一度目。
ほぼ完成。
しかし、ほんの一点だけ光り切らない。
95点でも十分な場面で、
「もう一度やらせてください」
その言葉に、職人のプライドを見ました。
砂型の設計からやり直し、シーリング加工を追加し、再挑戦。
そして――
(↑ほんのわずかな点が繋がっていない炎上ネコロゴ)
復讐は、光り方・注ぎ方がパーフェクトになるまで数回続けました。 当工房が把握している範囲以外に、何回の挑戦があったのか、何個の砂型が使われたのかはわかりません。
人員が動き、材料を使うという事はコストもかかる事ですし、スケジュール調整も大変だったと思います。
残りに近い、このプロジェクトに対してそこまで考えて、真剣に考えて結果を残そうとしてくれる会社があるのだと、本当に感動しています。
パーフェクトな炎上ネコロゴシーンは、下記の動画を是非ご覧ください
(↑かっこいい手注湯)
遂に完成!鋳造ネコロゴオブジェ
1400℃の鉄が流れ、ネコロゴが順番に光る。
炎ではなく、光。
燃やし尽くすのではなく、照らし尽くす。
鋳鉄製ネコロゴオブジェは、単なる記念品ではありません。
これは、
過去を燃やすのではなく未来を照らすためのロゴです。
様々なドラマ、溶けた鉄を超える熱意がありましたのおかげで、ついに鋳造ネコロゴオブジェが完成しました!!
(↑鋳鉄製ネコロゴオブジェ)
オブジェの受け取りの為に美濃工場を訪問し、プロジェクトにご協力いただいた皆様と一緒に炎上の動画(?)を確認!現場でのロゴの苦労や工夫を詳しく教えていただきました。
(↑ネコロゴが燃えている注湯映像の鑑賞会)
アニメーションの様に順番に光る動画も無事に撮影できましたので、赤色に炎上するネコロゴは下記の動画からご覧ください。
炎上ネコロゴ動画
1400℃の鉄でネコロゴオブジェを作る製造プロセス
プロジェクトのまとめ
偶然の出会いから始まったこのプロジェクトは、想像を超える規模と熱量を伴う挑戦となりました。
炎上という言葉を、ユーモアと誠実さで昇華する。
職人の技術とプライドに支えられ、ネコロゴは1400℃で光りました。
火と向き合う鋳造というプロセスを通して、
「調和」とは、困難の先にあるものだと改めて感じています。
製作にご協力いただきました鍋屋バイテック会社の皆様、本当にありがとうございました。
(↑ねこだまり工房鋳造ロゴプロジェクト記念写真 美濃工園にて)
2024年12月1日
ねこだまり工房株式会社