【製作事例】X100 #002 透明なJBピックアップ
ねこだまり工房で開催中のピックアップ企画【X100】の#002の制作事例です。
X100の企画についてはこちらからご確認ください。
【開発小話】Xシリーズピックアップ100種類の製作チャレンジ【X100】 – ねこだまり工房直営オンラインストア (nekodamari.work)
#002の概要
まずは外観はこちらになります。
#001と同様に、一般的なバルカナイズドファイバーから素材を変更しまして、透明素材で製作してみました。
透明なので、銅線が見える仕様になっています。今回、目新しさのあるレッドカラーの銅線を採用し、最後にラメ素材の保護糸を巻き付けて完成です。
透明素材であることから、ポッティング処理行うと汚れた様な質感になってしまいますので、ノーポッティングのドライ仕様となっています。
ハウリングに対しては若干不利になってしまいますが、一般的にポッティング処理を行わないものほど、ナチュラルなサウンド傾向になる事から好んで使われる方も多い仕様です。
特殊細工 銅線の非接触加工
#001に登場している非接触加工を採用しています。
内容が重複してしまいますので、#001の記事からご確認ください。
【製作事例】X100 #001 透明なSTピックアップ – ねこだまり工房直営オンラインストア (nekodamari.work)
あまり使われない銅線規格の採用
さてさて、珍しいレッドカラーの銅線を使用しているのですが、こちらの線径は通常用いる事のあまりない細い銅線を採用しています。
具体的には、通常のピックアップ銅線をAWG42 0.063mmを基準にして考えると、5段階程細くなります。「1段細くしてみました!」とかをすっ飛ばしている気もしますが、あまり使われていないのではないでしょうか。
線径を気にする場面は、ほぼないと思われますが雑学的に特徴を解説しますね。
まず、細さと抵抗値について。
巻き数が同じ場合、銅線が太いほど抵抗値が低く、細いほど抵抗値が高くなります。
この原理が、AWG42を使用している一般的なピックアップの抵抗値が似通っている理由になります。
パワーを足したい時にどうするのかというと、巻き数を増やして抵抗値を上げていくのですが、この場合太い銅線はホビン形状の限界値が存在します。
なので、AWG42で、どれだけ巻き数を増やしても物理的に抵抗値が10kに届く事はほぼありません。
では、ハイパワーと呼ばれる14kとかのピックアップが何故存在しているかと言えば、前述の様に銅線を細くする事で抵抗値が高くなるからですね。
そちらの原理に合わせて、僅か0.01mm程の差ですが、何千回と巻くとその差は大きくなりまして太い線よりも限界値が高くなり、多く巻く事ができます。
一般的なピックアップを思い浮かべていただきながら、次の写真をご覧ください。5段階も違うと、巻き数は同じだったとしても、見た目がこのくらい違ってきます。
ちなみに、ほぼ使わない理由の1つに切れやすくて扱いが難しいというのもあります。量産する時に切れて作業の中断しやすい素材を選ばないですからね。
(#001の0.050mmですら一般的ではありません。)
線径とサウンドの因果関係について ※要研究※
この仕様を使った遊び心のある細工もあるのですが、それはまたの機会にするとして。
気になる点として、『線径を変えると何が違うの?』というところだと思います。
一般通説として、『抵抗値が高い程ハイパワー』『抵抗値が低いほど繊細』です。
その為、『じゃあ線径が細い程ハイパワー用!』になるかと思いきや…。
『線径が太いほど、音が太くなる』
という通説もあったりします。線径が細いほど抵抗値が高いので、「ハイパワーだけど音は細い…?」とよく分からなくなってしまいますよね。
率直に書いてしまいますと、因果関係に関する学術的な論文は見つけられていません。
複合的な要素でサウンドが決まってくるはずなのですが、作り手サイドの情報だけでなく、弾き手、売り手サイドの情報もあり、書き手の主観に影響を受けた結果通説はよく分からない事になっています。
それでは客観性に欠けるので、1からデータ収集をしないと何とも言えないというのが、ねこだまり工房としての現時点での見解です。(2024年2月時)
消費者の視点を基準に考えてみますと、搭載し自分で試す以外は、信頼性の高い楽器メーカー・リプレイスメントメーカーが提供している仕様情報や、市場の評判しか知る術がありません。
理論や客観性のあるデータも必要だと思いますが、ミュージシャンの主観・感覚からくる評価も判断基準として大切だと思います。
その為、ねこだまり工房として現時点では、一般通説に合わせた解釈を発信させていただきます。
今回X100では、流通数が多く、イメージのしやすいアルニコ5を主体としたり、抵抗値も変化球を加える事は少なくしていきますので、直観で判断して頂ければ幸いです。
とは言え、因果関係について論証できる様なデータがない曖昧なままというのはしっくりこないので、データ収集の機材から分析機器までトータルで揃えていかないと作り手として明言できないかなと思っています。
コツコツ進めているので気長にお待ちをいただければ幸いです。
余談とまとめ #002のスペック紹介
さて、#002はJBピックアップで、こちらもカバーレス仕様となります。
抵抗値は前述の様に異例の細さになる為、かなり高めになりますが、常識の範囲外に飛んでいかない様に控えめな巻き数で製作しています。
アルニコ5との組み合わせになりますので、一般的なハイパワーピックアップと同じようなイメージを持っていただいて良いかと思いますが、ハウリング耐性が低めのノーポッティング仕様にご注意ください。
外観の話になってしまい恐縮なのですが、赤い銅線を際立たせるために保護糸も赤色にしています。クラシカルなジャズベースに乗せていただいても、『なにあれ』的な目を引くルックスになるのではないでしょうか。
1点、アウトレットポイントがありまして。ネックポジションの裏面記載を入れ忘れてしまいました…。
搭載した際の外観は揃っているのですが、裏側の記載があるのはブリッジ側のみとなります。スペック情報は、スペックシートを同梱していますので実用上の問題はありません。
#001と違い、フローティングでのセッティングではありませんので台座は付属しません。
#002スペック
対応機種 | JBタイプ ネック・ブリッジ用 1セット |
ホビン素材 | 透明素材 PMMA |
マグネット | アルニコ5 フラットポールピース |
銅線 | レッドエナメル 0.040mm |
リード線 | クロスワイヤー |
ポッティング処理 | ノーポッティング(なし) |
特殊細工 | 銅線の非接触加工 |
仕様 | ピックアップカバーレス、ブリッジのみRWRP(逆巻・逆着磁) |
抵抗値 |
ネック 14.45k ブリッジ 15.05k |
付属品 |
スペックシート、パッケージ、取付用ビス |
保証内容 |
通常使用における故障の場合、無償補修 その他、市販通常品に準ずる対応 |
注記事項 |
・製作におけるやむを得ない傷・スレなどがある場合があります。 ・寸法は、汎用的な規格に基づいていますが販売ページ記載の寸法をご確認の上、お買い求めください。 ・ピックアップは繊細なパーツで取扱に専門知識を有します。改造、取付は専門家にご依頼いただくか自己責任でお願いいたします。 ・取付にあたってご相談があれば、お問い合わせフォームよりご連絡ください。 ・試作品につき、パッケージ・外観・裏面の刻印情報など正規販売品と仕様が異なる場合があります。 ・原則1点限りとなりますが、同様のピックアップをお求めの場合セミオーダー形式で対応できる場合があります。詳しくはお問い合わせください。 |
販売情報 |
ねこだまり工房直営オンラインストアにて販売 【X100チャレンジ】Xシリーズ JBset #002 1点のみ – ねこだまり工房直営オンラインストア (nekodamari.work) 販売価格:17,600円(税・送料込) |
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お問い合わせ – ねこだまり工房直営オンラインストア (nekodamari.work)
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