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1400℃の鉄でネコロゴオブジェを作る鋳造ロゴプロジェクト

1400℃の鉄でネコロゴオブジェを作る鋳造ロゴプロジェクト

製作協力:鍋屋バイテック会社様(以下、NBK様) NBK(鍋屋バイテック会社)

1400℃の鉄でネコロゴオブジェを作る

今回の鋳造ロゴプロジェクトは、SNSのある投稿を目撃したところから始まりました。

X(旧:Twitter)でのNBK様の投稿

気が付いたら「突然すみません、ロゴを燃やしてみたいのですが…」とお問い合わせしていました。

本来であれば、「炎上」というネガティブな言葉は企業・メーカーとして避けるべきテーマでしょう。

しかしながら、ねこだまり工房株式会社として、今年4月にようやくお知らせできた一連の出来事の中で、「炎上」を含むネガティブなワードでサジェストが汚染されてしまっている状況にありました。

SNS・インターネット上における弊社に対する虚偽の流布・誹謗中傷行為に対する対応について – ねこだまり工房直営オンラインストア

NBK様の燃えてるロゴを見てふと、思い浮かびました。

『「炎上」の意味合いを「物理的な炎上」にしても面白いのでは…?』

(↑ネコロゴに溶けた鉄を注いでいるシーン)

ねこだまり工房としては、ご覧いただく皆様に『ユーモアのある話題』と受け取っていただければ、ロゴを燃やすだけの価値があると考えました。

とは言え、当工房の勝手な思惑で他社様との取り組みを行う事はできません。

製作協力をいただいたNBK様との初回ミーティングの前に「上記の様な意味合いでロゴを燃やしたいのですが…」とご相談したところ…。

今回プロジェクトの窓口を担当いただいた方から、

社内で本件への想いも共有させていただきました。過去の炎上を燃やし尽くせるようご協力させていただければと考えております。』

とメールが届きました。

断られる可能性を想定に入れた上で、『YES』か『やんわりNO』くらいの返答を予想していたところに、届いたメールを見た瞬間『燃やし尽くせるように』というワードセンスが良すぎてスタッフ一同思わず「カッコ良すぎるやろ!」と口に出してしまいました。

そうして頼もしすぎる仮打ち合わせから、プロジェクトが始動しました。

前例のない鋳造プロジェクト

鋳造とは、溶けた鉄を型に流し込んで製品を作るプロセスの事です。通常は強度が求められる工作機械などの部品製造を行う事が多いかと思います。

X(旧:Twitter)でのNBK様の投稿

今回のプロジェクトのきっかけとなる上記の映像は、NBK様のロゴアニメーションを再現する順番に溶けた鉄が流れていく仕様になっていました。同じ仕様を、ねこだまり工房のネコロゴで行い動画を撮影するというのが今回の主目的になります。

ちなみに、NBK様にとっても初の試みになるそうで前例のない手探りでのプロジェクトとなりました。

(↑砂型になったネコロゴ)
 
まずは、溶かした鉄の流れを専門のソフトウェアでシミュレーションを行いながら、型の設計を行い、次に工作機械を使って素材を削り出して実際の型を製作していきます。
 
NBK様との初回ミーティングの際に、WEB会議で実際の図面データを拝見しながら製法や仕様についての解説をしていただいていました。
ネコロゴの仕様上、文字は難しいという点に加えて、格子の線が細いデザインの為、若干太くなってしまうという注意点を説明されていました。(※1)
 
この時点で、専門職である設計士の3DCAD設計が必要になり、削り出しに使う工作機械も、数千万円の設備となりますので、型を作る必要がある時点でかなり大掛かりな準備が必要となっています。
 
前述の様に、『今回の主目的は鋳造の様子でロゴアニメーションの動画を撮影すること』です。ただ、折角鋳造をするならば「記念品にオブジェにしたい」と当工房がリクエストしたことから更にハードルが上がっていきます。
 
溶けた鉄(湯と言います)が流れる道(湯道)がフレームの様に見えた事から、折角なら左右対称にしたいと希望したところ、ネコミミに見える仕様にしていただきました!
 
また、オブジェとなった際に自立する様に土台や台座にも工夫を加える事をリクエストして、後は準備が整ったら「さぁ、いざ鋳造!」という場面です。
 
NBK様のご好意で実際の鋳造現場を見学させていただけることになり、実物の砂型を拝見すると…。
 
(↑裏面の砂型と、遊び心でつけられたネコちゃん)
 
まさかの更なる遊び心が加わった型が出来上がってました!光らせる為に一旦溜まるポイントにオブジェになった際を見越して、隠れネコちゃんが仕込まれていました。
 
そして、少し前に(※1)と書いたのですが、実際の砂型を見ると…。
 
(もしかして、ネコロゴの枠線が聞いてたより細くなってる…!?)
 
実際のロゴデザインに近づける為に、限界ギリギリまで攻めた設計にしていただいた様です。ネコロゴは、線が細いので印刷や装飾でも難しいと言われてしまう場面が多いです。
 
鋳造ともなると、デザインを優先しないのであれば倍以上の太さになっても仕方ないと思っていたところに、職人のこだわりを感じられる型を拝見するところから始まりました。
 
(↑鋳造の準備をしていただいている様子)
 

ネコロゴならではの課題が…

現場での準備が整い、鋳造チャレンジが始まったのですが、まさかのネコロゴならではの課題で高難度になってしまいました。

1.同時手注湯が必要になる問題

NBK様では、機械を用いて自動で鋳造を行える製造ラインを構築されています。実際の製品製造では、巨大な溶鉱炉から必要な溶けた鉄を移して大型の機械が自動で角度やスピードを調整しながら注いでいきます。

 

(↑溶鉱炉の蓋が開く瞬間)
 

今回のネコロゴオブジェは、単発製作なので、手作業で溶けた鉄を掬い注ぐ「手注湯」という製造方法になりました。 これは職人技が求められる難しい製造方法です。

NBK様では、技能承継の為に、手注湯の機会を度々設けているそうなのですが、今回、綺麗に光る為には熟練の職人技で一定の速度で注がなければならない事から、鋳造部門のトップとナンバー2のお二方が協力いただける事に!

 

(↑溶鉱炉から溶けた鉄を取り出すシーン)

 

「また手注湯をする機会が来るとは思わなかった」とお話されていた姿がまるで、ヒーローの登場シーンの様に見えました。

(↑溶けた鉄を運んでいるシーン)
 

ただでさえ職人技が必要になる製法なのですが、ねこだまり工房が完成した鋳造品をオブジェとして置きたいと希望したことで更に高難度となってしまいました。

2つの注ぎ口から、息を合わせて同時に注ぐ必要のある高度な挑戦です。

 
(↑惜しくもこぼれてしまったシーン)
 
溶けている鉄ですから、1,400℃の危険なものです。安全の為にも長い柄杓(ひしゃく)の様なもので注いでいましたが、長さがある分コントロールは難しいのに対して、注ぎ口は狭く、的を外してしまえば型の外にこぼれてしまいますし、一気に入れてしまえば入り口で溢れてしまいます。
 
慎重に、かつ溶けた鉄が冷えない様に手早く、正確に、息を合わせて同時に注いでいくという高難度の挑戦となっていました。

  

2.ネコロゴの線が細い問題

そして、技術や難易度以外の課題も…。

ネコロゴは、細い線に囲まれています。通常の鋳造では、構造物や大きな部品を作る事が多い為、そもそも細い線などのデザインのあるものを作る事の方が珍しくなってしまいます。

また順番に光らせる為には、一定の溝で溶けた鉄を留まらせる必要がある為に、線が細くなると圧力が足らず横から溢れてしまう課題が発生しました。

(↑惜しくも型から溢れてしまったシーン)
 
この問題を解消するために、手作業で砂型に修正・調整を加え、更にバーナーで余熱してから挑むなど微調整を繰り返しながら何度も挑戦してくださいました。
 
砂型の調整が必要になると分かった瞬間に、鋳造部門出身で現在は営業部門に所属されている方が、装備を整えて応援に加わってくれました。実は、鋳造部門だった際にナンバー3と呼ばれていたそうで、ネコロゴオブジェの為に、鋳造部門のトップ3名が集合してしまっておりました。
 
ヒーロー登場のBGMが聞こえてきそうなシーンです。
 
(↑砂型に手作業で修正を行っている場面)
 
予定では『この見学を経て完成!必要な処理を終えてオブジェを受け取り、プロジェクト完了!』という予定をしていました。
 
しかし、パーフェクトな対応策が見つからない為、予備を含めて5つほど用意していた砂型を使い切ってしまったので、後日再挑戦いただける事になりました。
 
惜しい!ところまでは届いていたのですが、鉄が入りきらず、一度砂型を崩してみると…
 
「ネコちゃんがおらん!」と、皆様ネコちゃんを大変可愛がっていただいて和気あいあいとした和やかな工園※見学となりました。
 
※NBK様では、工場ではなく工園と呼び環境整備されています。
(↑ネコちゃん不在の鋳造品)
 

工園見学の終了と、リベンジへ

正直難易度が上がってしまっている要素が「オブジェにしたい」と無茶ぶりしたことと、「ネコロゴである」事の2つじゃないかと思っていたので、完成せず・プロジェクト断念でも仕方がないかと思っていました。

工園見学を終える際に、念のため「もしできなかった場合は…」と打ち合わせをしようと思ったら、「できます。大丈夫です。」と力強く言い切られました。
 
実際の現場の様子を拝見したからこそ、この人達ならば、意地でも実現させるのだろうと強く感じました。この空気感は、実際に見学させていただかなければ分からないものだったかもしれません。
 
難しい場面になっても、顔をしかめたり険悪になる様子もなく、「だったら…」「こうしてみたら…」と取り組まれている姿は、見学者としてすごくカッコいい姿を見る事ができたと感じています。
 
(↑工園見学の際の工場長とねこママ)
 

熱いリベンジと職人のプライド

しばらくして、リベンジ動画が送られてきました。
ファイルを開いてみると、鮮やかに炎上するネコロゴが!
 
「あれ…?見学させていただいた時と、砂型の形が違う様な…?」メールには一切何も書かれていないので、当工房の憶測なのですが、「もしかして砂型の基になる型の削り出しからやり直している…?」
 
動画を拝見すると、少なくとも砂型にシーリング(密閉加工)を加えて側面から溢れてしまわない様にする更なる追加加工がされていました。その手間暇のおかげで、鮮やかにネコロゴが炎上したのですが、NBK様からとある申し出がありました。
 
(↑砂型にシーリング加工?)
 
「完成した様に見えたのですが、ほんのわずかに線が繋がり切っていない部分があるのでリベンジさせて欲しいです。」
 
動画を見返してみると、確かにほんのわずかな1点だけが光り切っていませんでした。とは言え、この状態でも点数をつけるならば、95点以上は出ていると言えると思いますし、ここをゴールにしても何も違和感はない場面です。
 
その実直な申し出に、職人としてのプライドやこだわりを感じ、ご無理のない範囲でのリベンジをお願いする事になりました。
 
(↑ほんのわずかな点が繋がっていない炎上ネコロゴ)
 
リベンジは、光り方・注ぎ方がパーフェクトになるまで数回続きました。当工房が把握している範囲以外に、何回の挑戦があったのか、何個の砂型が使われたのかは分かりません。
 
人員が動き、材料を使うという事はコストもかかる事ですし、スケジュール調整も大変だったかと思います。正直、最初の惜しい!状態でもプロジェクトとしてはそういう物という着地にしてしまう場面もあるのではないでしょうか。
 
余興に近い、このプロジェクトに対してそこまで誠実に、真剣に向き合って結果を残そうとしてくれる会社があるのだと、本当に感動しています。
 
パーフェクトな炎上ネコロゴシーンは、下記の動画を是非是非ご覧ください
 
(↑かっこいい手注湯)
 

遂に完成!鋳造ネコロゴオブジェ

様々なドラマ、溶けた鉄を超える熱意のおかげで、ついに鋳造ネコロゴオブジェが完成しました!!

(↑鋳鉄製ネコロゴオブジェ)
ロゴオブジェの受取の為に美濃工園を訪問し、プロジェクトにご協力いただいた皆様と一緒に炎上動画(?)を確認!現場での苦労や工夫を詳しく教えていただきました。
 
(↑ネコロゴが燃えている注湯映像の鑑賞会)
アニメーションの様に順番に光る動画も無事に撮影できましたので、鮮やかに炎上するネコロゴは下記の動画からご覧ください。
 

炎上ネコロゴ動画

1400℃の鉄でネコロゴオブジェを作る製造プロセス

 

プロジェクトのまとめ

たまたま拝見したSNSの投稿がきっかけではありますが、想定以上に大掛かりなプロジェクトになりました。鍋屋バイテック会社様の工園見学させていただいた際も、皆様とても暖かくそして熱心に向き合ってくださっており、本当に感謝しております。

炎上というデリケートなテーマが、今回の様にユーモアのあるプロジェクトに繋がり、無事に製作・公開ができました。

ご覧いただいた皆様に、火と向き合う鋳造というカッコいいプロセスがある事を知っていただける機会となり、1400℃で光るネコロゴが心に何かを与える事ができたのならば、プロジェクトは大成功と言えるのではないでしょうか。

製作協力いただきました鍋屋バイテック会社の皆様、本当にありがとうございました。

(↑ねこだまり工房鋳造ロゴプロジェクト記念写真 美濃工園にて)

2024/12/1

ねこだまり工房株式会社

 

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